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岡山市次世代農業支援事業『農業者と企業等の連携相談会』開催レポート

9月 25, 2018

地域を支える人材の支援・育成 岡山市 おしらせはぐくむ

岡山市次世代農業支援事業『農業者と企業等の連携相談会』開催レポート
『大切なのは信頼と適度なゆるさ? ~農作物にも優しいのが次世代農業の連携スタイル~ 』

 

9月12日(水)ピュアリティまきびを会場に『農業者と企業等の連携相談会』が開催されました。

※みんなの集落研究所では、当該事業に係る一部広報をお手伝いさせて頂いてます。

こちらでも何度か開催のご案内をしておりましたので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この連携相談会は、農業者の課題解決や新たな可能性づくりにつながるパートナー探しを、事業者の方々とのマッチングの機会の提供を通じて支援することを目的として開催されるものです。
当日は、12団体13名の農業者の方々と、4団体5名の事業者の方々にご参加頂きました。

今回の連携相談会で重要だと感じたことは大きく2点 「お互いの立場を尊重し合う信頼関係の大切さ」「すぐに連携の成果を求め過ぎない、前向きなユルさが連携のコツ」です。なぜそう思ったのか、相談会を振り返りながらご紹介します。

さて、タイトルにもあるこの「次世代農業」ですが、主催側ではこれを、「農業者と異業種の繋がりで生み出す、新しいビジネス」と捉えています。次世代というコトバの雰囲気から、テクノロジー重視かと思いがちですが、農業者だけの取り組みで及ばない部分で新たな可能性を生み出す繋がりが、次世代農業のモデルと捉えて頂ければと思います。

 

昨年度の事業の成果について

連携相談会の構成は大きく前後半に別れ、前半では事業の概要説明と昨年度の実績のご紹介、実際に連携された農業者と事業者のお二人から、連携の成果の要点についてなど丁寧にお話しいただきました。後半では、お集まりの方々同士でマッチングに向けた情報交換・相談をして頂きました。

まず主催の岡山市から、事業の概要と次世代農業モデル事業補助金について説明があり、運営事務局からは、次世代農業支援事業全体の概要、おもに支援内容の4種についての説明を行いまた。※ちなみにその4種とは、①農業者・企業情報の提供②連携相談コーディネート③連携相談会④次世代モデル事業補助金です。③の連携相談会が今回開催されたものにあたります。

続いて昨年度の事業での連携実績の紹介です。岡山市北区建部で主にブドウ・米・玉ねぎを生産されている「南輝農園」の南さんと、岡山市北区平和町で「居酒屋LAGER」を経営されている、株式会社goingの兵頭さんより、連携の内容とその感想についてお話を頂きました。そのお話を踏まえ、当事業のコーディネーターを務められている㈱蔵人の杉本さんより、当該連携において成果が上がったポイントなどを、お二人に質問を投げかける形で会場全体に共有頂きました。

 

連携内容について

お二人は昨年度の連携相談会での情報交換と個別マッチングを通じて新たなチャレンジに踏み出され、農産物と人的交流面での連携に取り組んでおられます。モデル事業に採択された内容は、「連携圃場の整備」「メニュー開発検討」「南輝農園のHPの作成」「連携内容発信媒体の作成」「イベントの実施」です。またそれら採択内容に加えて、当然ながら農産物の取引も行われています。
当初は南さんがスーパーに納品したぶどう、たまねぎ、お米などを、兵頭さんが店頭で購入し、お店で提供される形で連携が始まり、その素材の評判の良さから徐々に他の素材の購入・契約栽培、草抜きのお手伝いなど交流・お取引が広がっていったそうです。また、お店のスタッフが、素材について「どこでどのように作られているか」などをお客さんに説明できるようになったことが好評で、南輝農園のPRにも繋がっていったそうです。

 

 良い連携を生み出すポイントは?

お話では、お二人が良い連携体制を築けているポイントとして、「互いに無理のない供給・流通体制が構築出来ていること」が挙げられました。その他「今はこんな農産物があって、こう食べたら美味しいよ!」「農園が忙しい時期はお手伝いに行きますよ」といった、互いの状況や都合に合わせて助け合える信頼関係と融通をきかせることが、長期的に見た時に連携が続く仕組みづくりと、付加価値の向上にもつながっているように感じました。

そのように、互いの信頼関係の元、中規模安定的な生産流通のモデルを構築出来る可能性が見えてきており、次の目標として、南輝農園の繁閑等に合わせた取引内容の工夫や、店舗スタッフやお店のお客さんと、南輝農園との間での人的交流のサービス化を目標とされていました。

 

 

情報交換・連携相談で聞こえた声

休憩を挟んでの後半は、本日のメインイベントでもある、農業者と企業者による情報交換会です。農業者の方々が待つテーブルを、時間を区切って事業者の方々に順番に訪問頂き、一巡した後は各自気になられたお相手との自由相談とさせて頂きました。このあたり会場が盛り上がり過ぎ、進行に非常に苦労致しました(苦笑)

事業者の中には、日頃生産者としても農産物栽培に取り組まれている方もおられ、生産者と事業者の垣根なく、現状や希望される状況、課題について活発な情報交換が行われていました。その様子を同席させて頂きながら伺ったところ、
「手間ひまかけて作っており、食味的にも高評価を受けている米を、価値の分かる飲食事業者に、高価格で卸したい」
「生産者の取りまとめは出来るので、学校給食や社員食堂など大口の素材提供につながる取引先と連携したい」
「傷や熟成の都合などから生食用としては出荷できない果樹を素材に加工品を開発したい」
「パッケージ開発を通じて差別化を図りたい」
といった声が聞こえました。

一方の事業者さんからは、
「素材の効能などの機能的評価は農産物の差別化にも繋がる。色々な研究実績があり、また新たにワイン関係の専門家も加わった。共同研究などにも対応できるので、まずは気兼ねなく相談して欲しい」
「土地の利用方法として植物プラントのような取り組みもしているが、生産管理が難しい。生産管理のノウハウを持っていて、アドバイザー的に協力してくれる農業者と繋がりたい」といった声などが有りました。

 

相談会を取材してみて

事業者の方々が参加される「マッチングイベント」ということで、予定通り確実に、しかも短期的に利益が上がる連携を目的とされている方が多いのかなとか思っていましたが、舞台が「農業」ということもあり、求められているものは、信頼関係に基づいた、お互いの立場を考えられる柔軟さ、そしてそれは長く続けられるものかどうか、というところだったようにも感じます。
求める連携の成果のため、条件をかっちり決めて取り掛かることも大切ですが、まずは関係性を築いていくための中長期的な視点で行動することが、結局は連携の成果を出す近道なのかもしれません。その姿勢はなんとなく、科学的な裏付けも持ちながら、不都合にも柔軟に向き合う、農業者と農産物との付き合い方そのものにも感じます。

相談会終了後に回収させて頂いたアンケートからは、「この相談会をきっかけに、さっそく連携しが始まりそうです!」という嬉しい声がある一方、「もう少し幅広い業種の事業者の方にも参加して欲しい」といった意見も頂きました。今後の開催時にはこれら頂いたご意見にお応えできるよう、準備を整えて参りたいと思います。ご参加頂いた皆様、ありがとうございました!

 

次回の連携相談会のご案内

最後に、次回の秋の連携相談会のご案内をさせていただきます
次回開催は下記の通りとなります。このレポートを読んでなんとなく気になられた方、ぜひぜひご参加下さいませ!

『岡山市次世代農業支援事業 農業者と企業等の連携相談会』
日時 平成30年11月28(水)14:00~17:00
場所 ピュアリティまきび
主催/運営:岡山市/岡山市次世代農業支援事業事務局(事業受託:ランドブレイン株式会社)

関連情報を今後も『岡山市次世代農業支援事業 マッチング紹介ページ』にてご紹介しておりますので、こちらもどうぞお見逃し無く!